フィレンツェで、今もなお1300年代の工法でトレイや額縁を作り続ける本当の職人仕事の工房。
他の工房は機械化が進む中、すべて手仕事で作り続ける彼らの作品たちは、なんとも言えない暖かさがある。
いろんな工房の製品を見た中で、ここだとピンときたのは、きっとその職人の気概と意地、そしてものづくりへの情熱が滲み出ていたからだろう。
いま、彼らにフィレンツェのトレイをはじめ、新しい商品の発注をしていて、もうすぐ発送の段階に来ている。
コロナ前に会った時からもう数年。
あの時は、何度も工房に顔を出し、ビステッカフィオレンティーナをご馳走様してもらい、とても良い時間を過ごした。その後も、たまに個人的なメッセージのやりとりをしていて、そのもはや友人のつながりが私は好きだ。
この数年間、イタリアをはじめコロナの大打撃を個人店は受け、いまもその影響は深い。しかも、ヨーロッパはウクライナとロシアのこともあり、より経済的に厳しい状況のようだ。
やりとりしているステファノは
「収入は上がらないのに、光熱費などが200パーセントは上がった、だから、うちの商品も申し訳ないけど値上がりするよ。じゃないと、店を閉めるか、キャンドルの時代に戻るしかない。」と、嘆いていた。
さらにはいまの円安、数年前と比べるとかなりユーロが高くなっている。日々、上がり続けるレートを見てヒヤヒヤしている。
私がお金持ちなら、沢山買って彼らを応援することはできるけど、そんなお金なんてないし、この店も維持するのでやっとの状況。人を応援できるような余裕はない。
けど、思い切って自分史上いままでで一番沢山、彼らから仕入れることにした。財政的にもレート的にもいままでで一番不利な状況だけど、これは賭けだ。
「結果が出ないなら諦めろ」と言われたこともあるけれど、この店をやるという勝負、時間はかかるけど、心で負けたらダメだと思っている。
「情熱をかければ絶対いつか返ってくる」と、昔、ステファノに言われた言葉も深く残っている。
実際、いろんなことに巻き込まれながら、たまにほったらかしになりながら、この店を一人で細々とやっているが、店をやることによって出会った人たち、イタリアが好きな人たち、好きなことを商売にしてきた先輩方、イタリアの仕入れ先の情熱のある仕事ぶり、色んな人の言葉やコミュニケーションを通しての温かいもの、そんなものにいままで沢山救われてきて、だからこそやる意味があると思ってきた。
とはいえ、商売としては成り立たないといけない。
値上げするか、迷うなぁ。
お金の問題は、尽きない。
2022/10/18 maiuco
“時代に翻弄されながらも、職人が在り続けてくれるということ” に対して1件のコメントがあります。